公開日 2026年10月21日
はじめに
ただいま、議長のお許しをいただきましたので、市長就任にあたり、今後の市政運営について、私の所信を申し上げます。
はじめに、7期、通算23年7カ月の長きにわたり、北茨城市政の発展と市民福祉の向上にご尽力されました、故豊田稔前市長のこれまでのご功績に対し、深甚なる敬意と感謝を申し上げますとともに、謹んで哀悼の意を表します。
また、市議会議員の皆様には、約20年にわたり、共に市政に携わる中で、委員会活動や議会活動を通じ、多大なるご協力と温かいご指導を賜りましたこと、この場をお借りして、心より感謝申し上げます。そして、過般の北茨城市長選挙におきましては、多くの市民の皆様から温かいご理解とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
第20代北茨城市長として、今、この場に立ち、私が感じているのは、喜び以上に、その責任の重さです。これまで築かれてきた北茨城市の歴史と歩みを大切にしながら、新しい時代にふさわしい北茨城市を、皆様と共につくっていく。その決意を胸に、市政運営に全力を尽くしてまいる所存です。
この決意の原点にあるのは、私がこれまで、市議会議員として6期にわたり、大切にしてきた市民の皆様との対話です。私は地域を歩き、一人ひとりの暮らしに向き合ってまいりました。そこで出会ったのは、統計の数字ではありません。一人ひとりの暮らしでした。子どもの将来を心配するお父さん、お母さん。運転免許を返した後の生活に不安を感じている高齢者。人手不足の中でも、地域のために事業を続けている経営者。医療や介護、福祉の現場で、市民の暮らしを支えてい方々。災害が起きるたびに、地域のために力を尽くしてくださる方々。そして、「北茨城をもっと良くしたい」そう願う、多くの市民の皆様です。
私は、市民の皆様との対話を通じて、一つのことを学びました。市民の声の中にこそ、行政が向き合うべき課題がある。ということです。だからこそ、私がこれからの市政で最も大切にすること。それは、「市政の主役は、市民である。」ということです。
行政の都合から考えるのではなく、市民の暮らしから考える。前例があるから続けるのではなく、今、本当に必要なのかを考える。一度決めたから変えないのではなく、時代が変われば、もう一度考える。昭和、平成、令和と時代が移り変わる中で、私たちを取り巻く環境も大きく変化してきました。人口減少、少子高齢化、人手不足、そして自然災害への備え。これまでと同じ考え方だけでは、解決できない課題が増えています。
しかし、私は、これまでの北茨城市が歩んできた歴史を、決して忘れてはならないと思っています。今日の北茨城市があるのは、長い年月をかけて、このまちを築いてこられた先人の皆様、歴代の市長、市議会、職員、そして市民の皆様の努力があったからです。その歴史と努力に敬意を払い、受け継ぐべきものは、しっかりと受け継いでまいります。
その上で、私は申し上げたいと思います。変えることは、過去を否定することではありません。大切なものを未来へ守り継ぐために、今、変わる必要があるのです。守るべきものは守る。変えるべきものは変える。私は、その覚悟を持って、市政を担ってまいります。そのために、私は、5つの基本方針を掲げています。
第1に、市民が主役の行政改革。
第2に、子ども・子育てを徹底応援。
第3に、高齢者が安心して暮らせるまちへ。
第4に、災害に強い、安全・安心な北茨城へ。
第5に、産業の支援と、観光・海・自然を「稼ぐ力」に。
これらを市政運営の基本として、一つひとつ実行に移してまいります。
第1 市民が主役の行政改革
第1に、市民が主役の行政改革です。
私は、行政改革とは、単に予算を削減したり、事業を減らしたりすることではないと考えています。市民にとって分かりやすく、そして信頼できる市役所をつくることです。政策がどのように検討され、決定されたのか、その過程を市民の皆様に分かりやすくお伝えしてまいります。市民が市政を知ることができる。市民が市政に参加できる。そして、市民の声が市政に届く。そのような開かれた市政を目指します。
また、市民生活に直接関わる仕事を日々担っているのは、市役所の職員の皆さんです。私は、これまで職員の皆さんが積み重ねてきた経験と知恵を大切にしたいと思っています。その上で、新しい課題には新しい発想で向き合い、市民のために何ができるのかを、共に考える市役所をつくってまいります。
「できない理由」を探すのではなく、「どうすればできるのか」を考える。そして、職員が安心して意見を出し、知恵を出し合い、市民のために挑戦できる職場環境を整えてまいります。
私自身も、職員の皆さんに指示を出すだけの市長ではなく、共に考え、共に悩み、そして、最後は責任を引き受ける市長でありたいと思っています。
市役所が変わることは、市民サービスが変わることです。市民の皆様から信頼され、職員の皆さんが誇りを持って働ける北茨城市役所を目指してまいります。
第2 子ども・子育てを徹底応援するまちづくり
第2に、子ども・子育てを徹底応援するまちづくりです。
北茨城市が直面する大きな課題の一つが、人口減少です。
本市の出生数は、2019年の221人から、2025年には130人となっています。しかし私は、この130という数字だけを見ていてはいけないと思っています。なぜなら、その数字の向こう側には、130人の子どもたちと、その家族の暮らしがあるからです。
人口減少は、出生数だけで考える問題ではありません。若い世代が北茨城で働くことができる。住むことができる。安心して結婚し、子どもを産み、育てることができる。そして、子どもたちが安心して学び、成長できる。こうした環境を、一つひとつ整えていくことが必要です。
そのため、雇用、住宅、結婚・出産、子育て、教育を、別々の政策として考えるのではなく、一つの「若者定着政策」として進めてまいります。特に、20代、30代、とりわけ若い女性の転出入の動向や、市内での就業状況を丁寧に分析し、若い世代が北茨城市で暮らし続けられる環境づくりに取り組みます。
私が目指すのは、「北茨城を出なくても、夢を持てる。」
そして、一度北茨城を離れた人が、「いつか北茨城に帰りたい。」そう思えるまちです。
また、これまで本市が進めてきた経済的な子育て支援は大切にしながら、さらに「子育ての不安を減らす支援」を充実させてまいります。子どもが急に熱を出した。仕事が終わるまで、子どもを預ける場所がない。出産したけれど、育児への不安を感じている。そんなときに、「誰かに頼っていいんだ」と思える北茨城にしたいのです。
病児・病後児保育、小児科のオンライン診療、休日や夕方の預かり、放課後児童クラブ、産後ケア、相談支援など、子育て世代が安心して仕事と家庭を両立できる環境を整えてまいります。
また、子どもたちが家庭の経済状況にかかわらず、安心して学び、成長できるよう、学校のあり方を考え、教育環境、フリースクールの充実にも取り組みます。
行政だけではなく、市内企業とも連携し、育児休業や短時間勤務などを利用しやすい職場環境づくりも進めます。
子育ての中心は家庭。その家庭を地域全体で支える。地域全体で子どもたちを育み、その未来を支える北茨城をつくってまいります。
第3 高齢者が安心して暮らせるまちづくり
第3に、高齢者が安心して暮らせるまちづくりです。
私は、高齢者を「支えられる人」とだけ考えたくありません。
今日の北茨城市を築いてこられた方々であり、これからも地域を支える大切な一員です。病院へ行く。買い物へ行く。友人に会う。地域の活動に参加する。そして、働く。そうした当たり前の暮らしを、年齢を重ねても続けられる北茨城をつくりたいと考えています。
そのためには、医療や介護、福祉サービスだけではなく、移動、買い物、見守り、社会参加を一体として考えることが重要です。その中心的な課題の一つが、地域交通です。「免許を返したら、外に出られなくなった。」そんな暮らしを、当たり前にしてはいけません。
駅や医療施設など、主要な拠点を結ぶ交通を確保しながら、地域の実情に応じて、デマンド交通やタクシーなどを組み合わせてまいります。また、病院、福祉施設、学校など、地域に既にある車両や人材についても、安全性や制度上の課題を整理した上で、地域交通に活用できないか検討してまいります。また、市民の皆さまの善意や家族の協力も必要ですので、ご協力をお願いいたします。
そして、私が目指すのは、高齢者だけでなく、障がいのある方も、支援を必要とする方も、誰もが住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らせるまちです。年齢や障がいの有無によって、暮らしの選択肢が狭められることのない地域を目指します。
「支えられる人」と「支える人」を分けるのではなく、誰もが支え合い、誰もが役割を持てる地域へ。医療、介護、障がい福祉、地域交通、社会参加をつなぎ、安心して暮らし続けられる北茨城をつくってまいります。
第4 災害に強い、安全・安心な北茨城
第4に、災害に強い、安全・安心な北茨城です。
2023年9月の台風第13号では、北茨城市でも大きな浸水被害が発生しました。この経験を、私たちは決して無駄にしてはなりません。
災害は、行政の計画どおりには起きてくれません。防災計画がある。避難所がある。名簿がある。それだけでは、市民の命を守れないことがあります。
大切なのは、「その人が、本当に避難できるのか。」ということです。特に、高齢者や障がいのある方など、自力で避難することが難しい方については、誰が。いつ。どこへ。どうやって。避難を支援するのか。そこまで具体的に考えなければなりません。
防災部門と福祉部門が連携し、ケアマネジャー、相談支援専門員、民生委員、自主防災組織など、日頃から本人を支えている方々の力も借りながら、実効性のある個別避難計画づくりを進めてまいります。
また、災害時には、正確な情報を必要な人に、必要なときに届けることが重要です。情報を発信するだけでなく、その情報が市民に届き、実際の避難行動につながることまで考えてまいります。
地震、津波、豪雨など、あらゆる自然災害に備え、行政だけでなく地域全体で支え合い、市民の命と暮らしを守る北茨城をつくります。
計画をつくるための防災ではなく、命を守るための防災へ。その実現に向けて、取り組んでまいります。
第5 産業の支援と、観光・海・自然を「稼ぐ力」に変えていく
第5に、産業の支援と、観光・海・自然を「稼ぐ力」に変えていくことです。
人口減少が進む中で、地域経済を支えるためには、働く場を守り、産業の活力を高めていかなければなりません。
地域に根差した企業、農林水産業、商業、観光業など、多くの事業者の皆様が、雇用を生み出し、市民の暮らしを支えてくださっています。
一方で、多くの事業者が人手不足という課題に直面しています。
これからの時代、人材を奪い合うだけでは、地域の産業を維持することはできません。必要なのは、仕事のあり方そのものを見直すことです。DXや省力化を進める。そして、高齢者、障がいのある方、子育て世代、外国人材、Uターン人材など、多様な人がそれぞれの力を発揮できる働き方を広げる。
人が足りないからできない、ではなく、地域にある力をどう生かすか。雇用のマッチング等、地域産業の支援に取り組んでまいります。
そして、北茨城市には、全国に誇ることのできる豊かな資源があります。五浦があります。六角堂があります。日本美術があります。海があります。山があります。平潟、大津の漁業があります。温泉があります。豊かな食があります。必要なのは、それをつなぐことです。
自然に触れて、山を歩いたり、大津港で海の幸を楽しみ、温泉に入り、北茨城に泊まっていただく。それぞれの地域資源をつなぎ、滞在時間を延ばし、地域での消費を増やす。観光客が何人来たかだけではなく、どれだけ長く滞在していただけたか。どれだけ地域で消費していただけたか。そして、もう一度来たいと思っていただけたか。その視点を大切にしてまいります。
北茨城の豊かな自然、食文化などの地域資源を国内外に発信し、外国人観光客の誘致を進めます。交流人口の拡大と地域全体の「稼ぐ力」を高めてまいります。
財政と事業の見直し
ここまで、私が目指す 5 つの基本方針を申し上げました。
しかし、これらを実現するためには、避けて通ることのできない課題があります。それが、財政改革です。
財政改革とは、お金を使わないことではありません。市民のために、お金の使い方を変えることです。
限られた財源で、あれもこれも行うことはできません。だからといって、市民サービスを一律に削ればよいというものでもありません。
私は、これからの市政運営において、「守るもの」「変えるもの」「やめるもの」を明確にしてまいります。
公共施設のあり方。事業や補助金の効果。行政内部に残る紙や手作業。施設の維持管理。そして、大型事業。一つひとつを丁寧に検証し、その必要性と効果を見極めてまいります。
富士ケ丘のキャンプ場については、一旦中止します。見直すべきものは見直してまいります。
データセンターについては、電力制限があることから、小規模なデータセンターを含め、今後、検討してまいります。
高北清掃センターの隣接地に計画中の(仮称)中郷自然公園については、トイレの設置は必要と考えますが、もう一度、事業計画を見直してまいります。
北茨城新電力については、地域で生み出されたエネルギーの価値を地域に残し、市民の暮らしに還元するという考え方については、大きな可能性があります。しかし、市民の大切な税金を使う以上、良い理念だからという理由だけで進めるわけにはいきません。本当に持続可能な事業なのか。本当に地域に利益を還元できるのか。リスクも含めて十分に検証してまいります
そして、生み出した財源を、市民病院の医療や高齢者の交通、教育、子育て、防災、若い世代の未来へと振り分けられるか、試算検討いたします。そして、その判断の根拠を市民の皆様に分かりやすく示し、納得と信頼を得られる市政運営に努めてまいります。
市議会議員の皆様、そして市民の皆様へ
最後に、市議会議員の皆様、そして市民の皆様へ
市議会議員の皆様に申し上げたいと思います。
市長と議会は、それぞれ市民から負託を受け、市政に携わる立場にあります。考え方が異なることもあるでしょう。意見がぶつかることもあると思います。
しかし、それは決して悪いことではありません。大切なのは、「誰が言ったか」ではなく、「市民にとってどうなのか」。その一点ではないでしょうか。
私は、議会からの厳しいご指摘にも真摯に耳を傾けます。議論すべきことは、十分に議論します。そして、市民のためになる提案であれば、立場を超えて取り入れてまいります。
市長と議会は、緊張感を持ちながらも、それぞれの役割と責任を果たしていかなければなりません。市長と議会が、対立することを目的に向き合うのではなく、共に市民の方を向く。そのような建設的な関係を築いてまいりたいと考えています。
そして最後に、市民の皆様に申し上げます。
北茨城市を変えるのは、市長一人ではありません。市役所だけでもありません。議会だけでもありません。
このまちに暮らす、お一人おひとりです。子どもたちに、どんな北茨城を残すのか。10年後、20年後。「もっと早く変えておけばよかった」と言うのか。それとも、「あの時、みんなで変えてよかった」と言えるのか。私たちは今、その分かれ道に立っています。私は、市長として、決断から逃げません。
しかし、皆様の声を聞かずに決めることもしません。聞く。考える。議論する。そして、決める。決めた以上は、責任を持つ。その積み重ねによって、市民から信頼される市政をつくってまいります。
私が目指す北茨城は、決して特別なまちではありません。子どもが笑っている。若者が未来を語っている。働く人が希望を持っている。高齢になっても安心して出かけられる。障がいがあっても、自分らしく暮らせる。困ったときには、誰かに助けを求められる。そして、「私は、このまちで暮らしていてよかった。」そう思えるまちです。
これまで北茨城を築いてくださった方々への感謝を胸に。そして、これからこのまちを生きる子どもたちへの責任を胸に。私は、市民の皆様と共に歩み、職員の皆さんと共に考え、市議会議員の皆様と議論を重ねながら、新しい北茨城市の実現に向けて、全力を尽くしてまいります。
すべての世代が北茨城で幸せに暮らせるまちへ市民が主役の、輝く北茨城の未来のために。誠心誠意、市政運営に取り組んでまいります。
市議会議員の皆様、そして市民の皆様、より一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げまして、私の所信といたします。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
令和8年10月19日 北茨城市長 今 井 路 江
※PDFはこちら:今井路江新市長 所信表明[PDF:204KB]

